こんにちは、BUZZCASTのKITTYです。
中国の人気動画プラットフォーム「bilibili」をご存知の人は多いですよね?
ただ、中国のサービスでよくある話ですが、名前は知ってるけど、実際どういうプラットフォームなのかイマイチ理解していない、という人は多いのではないでしょうか。
ということで、今回は「今更聞けないシリーズ」として、日本でもよく聞かれる中国の人気動画プラットフォーム「bilibili(ビリビリ動画)」についてご紹介したいと思います。
bilibiliとは
bilibiliとは、2009年にサービスが開始された、中国の若者に人気のある動画共有サイトです。主にACG(アニメ・漫画・ゲーム)関連の動画が多く、それ以外にも音楽、ドラマ、エンタメ動画などの総合的なコンテンツもあり、ライブ放送も対応している多様化な動画プラットフォームと言えます。
2018年3月には米国のNASDAQ市場に上場し、上場時の時価総額は31億3000万ドル(約3,344億円)となりました。bilibiliの2018年年間財務レポートによると、2018年の総収益(売上)は41.3億人民元(約685.8億円)に達し、前年から67%増加しているそうです。
※Bloomberg – Bilibili Inc過去一年株価データ引用
※bilibili 2018年年間財務レポート引用:http://ir.bilibili.com/static-files/ab2687d0-b115-43ab-ade3-af031cb8b73d
2018年第四半期時点で、月間アクティブユーザー数(MAU)は9,280万人を擁し、1日あたりの平均利用時間は約78分。そして、2018年第三半期時点で利用者の8割は1990~2009年生まれのジェネレーションZ世代(Gen Z)=10代後半だそうです。
※引用:https://wallstreetcn.com/articles/3440668
再生回数とエンゲージメントから見ると、毎日の動画平均再生回数は4.4億回近く、月間平均エンゲージメント(コメント、いいね、ポスト、投げ銭)は10億回を獲得できました。
動画プラットフォームとして、多くの若いユーザーに支持されているbilibiliはかなり大規模な動画配信サイトだと分かりました。
動画プラットフォームとしての立ち位置
他の動画プラットフォームとの立ち位置の違いを示すために、中国国内の動画プラットフォームと、日本を中心とした中国地域以外で知名度の高い動画配信プラットフォームを、「ゲーム特化/非ゲーム」と「ライブ配信/アーカイブ動画」という軸に分けて、マッピングしてみました。
bilibiliと同じように「非ゲームコンテンツ」がメインで「アーカイブ動画」中心のプラットフォームで似ているプラットフォームとしては、「ニコニコ動画」があります。
コメントが動画に被さって流れるという特徴があり、それぞれ「ニコニコ大会議」、「BILIBILI WORLD」というプラットフォーム主催のリアルイベントがあるという共通点もあります。
ゲーム実況のライブ配信プラットフォームについて、中国の「Dou Yu斗魚直播」、「火貓直播」、「虎牙直播」は日本の「Mirrativ」のような存在です。
「YouTube」のようなプラットフォームは中国国内で「56.com」、「ACFUN」などが人気です。「17 Live」と似ているライブ配信サービスは「YY」、「一直播」と言うプラットフォームがあります。
bilibiliの特徴
次はbilibiliの特徴を1つずつ説明していきたいと思います。
①多様な動画カテゴリー
ホームページにアクセスすると、上部には動画カテゴリー一覧が表示され、それぞれの動画本数も記載されています。
動画本数を見ると、主に「音楽」、「ゲーム」、「生活」、「芸能」、「映画・ドラマのレビュー」の動画が多く存在し、多様なコンテンツが存在することがわかります。
②「流れるコメント」機能
bilibiliと言えば「動画に被さって流れるコメント」は強く印象に残り、人気のある機能です。
日本の動画サイト「ニコニコ動画」と同じく、ユーザーがコメントを書くと、リアルタイムに動画の画面に流されます。
動画を見ながらユーザー同士で擬似コミュニケーションが生まれるこのコメント機能は、ユーザーのエンゲージメントが高い要素の一つかもしれません。
③「コイン」機能
動画の下に「いいね」、「お気に入り」、「シェア」の機能以外、「コイン」をあげるボタンがついております。
※左から右の機能:「いいね」、「コイン」、「お気に入り」、「シェア」
ユーザーは動画を見てその動画を気に入ったら、お気に入りの動画に「コイン」をあげることが可能です。動画の「コイン」数が多ければ多いほど、他の動画の関連動画に出る確率が上がり、より多くの再生を稼ぐことが可能になります。「コイン」を使用することで、でユーザー名を変更したり、イベントに参加したりする事もできます。
「コイン」は毎日ログインしたり、動画を投稿したりして獲得することができます。
④「キャンペーン」からの報酬
bilibiliはUXの観点から、YouTubeとは異なり、現状は動画に広告を流さない方針にしています。
ただ、動画投稿者(クリエイター)に金銭で還元するために、クリエイター向けの「キャンペーン」を定期的に実施しています。
BaoBaoKanの記事(中国語)によると、登録者数が約180万のエンタメ系bilibiliクリエイターが獲得している報酬は、タイアップ案件やbilibiliの主催したキャンペーンなどから、月間トータル約30万RMB(約500万円)になっているという情報もあります。
ではbilibiliの主催する「キャンペーン」とはどんなものがあるのでしょうか。3つのキャンペーンについてご紹介させていただきます。
1.オリジナル動画キャンペーン(創作激勵計劃)
オリジナル動画を作って投稿する、というクリエイターのモチベーションを上げるためにbilibiliはこの「オリジナル動画キャンペーン」を行っています。
登録者数1000人以上、もしくは動画累計再生回数10万以上のクリエイターは「オリジナル動画キャンペーン」に参加する事ができます。
キャンペーンへの参加条件は下記となるそうです。
- 必ず自作のオリジナル動画であること
- タイアップ案件ではない動画であること
- 動画が審査に通り、bilibili内で公開されるまで、他のプラットフォームにその動画を公開しないこと
- 「アニメ」、「広告」、「映画・ドラマ」(ドキュメンタリー、映画、ドラマも含む)カテゴリーに属する動画ではないこと
報酬の計算方法については公式サイトで明記されておらず、動画の内容、視聴者の反応(エンゲージメント)などによってプラットフォーム側で判断されているようですが、ネット上流れている情報によると、1万再生当たり、約30RMB(約500円)をもらえるらしいです。
※bilibili公式サイト引用
※womenbooks記事引用:http://www.womenbooks.com.cn/nr/32307.html
また、先程言及した登録者数約180万のクリエイターの収益のうち、約4~5万RMB(約65万円)はbilibiliの「オリジナル動画キャンペーン」からの収益になります。
※BaoBaoKan記事引用:https://www.baobaokan.com/d/Fx3Uz8-AAIO
2.広告キャンペーン(懸賞計劃)
上記にもある通り、bilibiliでは動画の中には広告は流れない仕組みになっておりますが、動画の下の位置に広告バナーを表示することはでき、「広告キャンペーン」を通してクリエイターはこの広告バナーを掲載し、収益を得ることが可能です。
このキャンペーンの参加条件は下記とのことです:
- 登録者数10,000以上の投稿者であること
- 「自作動画キャンペーン」に同時に参加している場合、広告が付いている動画に対しては「広告キャンペーン」のみの収益の獲得になる
報酬については広告のインプレッションを元に計算されており、bilibiliは個人クリエイターに対しては広告収益の50%の支払い、企業アカウントに対しては広告収益の60%の支払いとなっているようです。
ただ、広告キャンペーンの収益は比較的少なく、参加しているクリエイターは少ないようです。
※BaoBaoKan記事引用:https://www.baobaokan.com/d/Fx3Uz8-AAIO
3.投げ銭キャンペーン(充電計劃)
bilibiliにはクリエイターに対する「投げ銭」機能(「充電」と呼ばれています)がついており、ライブの時には限らず、お気に入りのクリエイターに「投げ銭」をすることができます。また、「投げ銭」をする視聴者側にも、「経験値」が獲得できるというメリットがあります。(「経験値」については後述します)
ただし、「投げ銭」機能をアクティブするためには申し込みが必要で、審査を通過すると使えるようになります。
※「電池」100を上げると経験値10を獲得
⑤YouTuberのような動画クリエイター「UP主」が多く存在し、ゲーム実況者が人気
オリジナル動画を投稿する「UP主」と呼ばれるbilibiliの動画クリエイターは現時点で月間平均57万人存在し、UP主製作の高品質動画(PUGV:Professional User Generated Video)は2018年12月総再生回数の89%を占めています。
※bilibili 2018年年間財務レポート引用:http://ir.bilibili.com/static-files/ab2687d0-b115-43ab-ade3-af031cb8b73d
その中で、どのようなチャンネルが人気なのか「UP主」登録者数ランキングを調べてみました。
【bilibili「UP主」チャンネル登録者数ランキングTOP20】
※2019年3月15日、ランキング引用https://www.kanbilibili.com/rank/ups/fans
※企業チャンネルは除く
TOP20ランキングを見ると、全チャンネル、登録者数は200万人を超えていました。
上記ランキングの人気「UP主」に関して、どのような動画をしているクリエイターが多いのか、動画のジャンルという軸で整理してみました。
※企業チャンネルは除く
40%が「ゲーム実況」チャンネルとなっていて、人気があるジャンルだということが分かります。その次はACG関連のレビューコンテンツが人気のようです。
⑥公式配信
クリエイターのオリジナル動画以外にも、bilibiliが公式配信している動画もあります。
bilibiliが様々な映画・ドラマ・アニメのライセンスを取得し、テレビ番組のように毎週決まった時刻に新エピソードを配信しています。bilibili公式配信動画は画面右上に「bilibili正式版、独占配信」という透かしが入り、ほとんどが中国国内のみ閲覧可能となっています。
⑦転載動画
転載動画に関しては、元の投稿者の許可を得ていない「非公式」チャンネルと同意が得られた「半公式」の転載チャンネルが存在しています。中国の字幕ボランティアが協力し合って、YouTube掲載の動画を中国語字幕付きで転載していたりします。
⑧会員登録
ユーザーは会員登録しなくても動画を視聴することができますが、動画投稿やコメント投稿などの機能を使うためには、会員登録が必要です。ただ、誰でもすぐに会員登録ができる訳ではなく、「メール/携帯の認証」は前提として、「既存会員に招待をされる」ことか「bilibiliのテストに合格する」ことが会員登録の条件となります。
bilibiliのテストに関しては、120分以内で100問を真剣に答えなければいけなく、かなりハードルが高いです。
第一部は基本的なbilibiliの使用について、「ユーザーを通報したい時にどうすればいいですか?」などの質問がされます。
第二部は専門知識の質問です。「アニメ」、「音楽」、「ドラマ」など色々な選択肢が提供されますが、そのフィールドに関する知識を問われる質問が多くされます。例えば「アニメ『デスノート』で、誰が夜神月を殺しましたか?」のような質問もあります。
正規会員になると、多くの機能が開放されますが、さらにbilibili動画を利用することにより得られる「経験値」によって、会員レベルが上がっていきます。レベルは0からレベル6まであり、それぞれ必要な経験値と解放される機能は下記となります。
※bilibili公式サイト引用
色々な機能を使うために「経験値」を集めさせるという手法は、ユーザーがいろいろ楽しめながらプラットフォームへのエンゲージメントを高める一つの方法かもしれません。
bilibiliでのVTuberトレンド
近年日本に話題になっている「VTuber」は中国でも増えてきました。
今年の1月には日本VTuber事務所ホロライブがbilibiliと契約し、去年から所属するVTuberの公式チャンネルをbilibiliで開設しはじめ、中国での活動を本格的に開始しました。
そこで、現時点での、bilibili内「VTuber登録者数ランキング」を調べてみました。
【bilibili内VTuberチャンネル登録者数ランキング】
※2019年3月15日、ランキング引用https://vtuber.magictea.cc/rank/all
※日本VTuberは青文字(公式・非公式含む)、中国のバーチャル投稿者は赤文字で表示
主に日本語で配信している3位の「白上吹雪」、6位の「神楽めあ」など、bilibiliでのチャンネル登録者数がYouTubeのチャンネル登録者数より上回るVTuberが数人おり、中国で注目を集めています。
※白上吹雪 bilibili限定APEX実況動画
また、2位「木糖纯和庄不纯」と4位「虚拟次元计划」などの中国のバーチャル投稿者も人気があるようです。
※木糖纯 Ring Of Elysium実況動画
今後、「VTuber」も含めて「バーチャル投稿者」がますますbilibiliに浸透していく可能性は高そうです。
まとめ
今回は「中国版ニコニコ動画」と呼ばれる「bilibili」について調査をしてみました。
中国では「bilibili」はティーンが多い、大きな動画配信プラットフォームで、マネタイズの仕方や会員機能などに独自性があることが分かりました。
また、YouTuberのような「UP主」が多く存在し、その中でもゲーム実況は人気コンテンツのようです。
最近のトレンドでいうと、日本で盛り上がりを見せているVTuberの波がbilibili にも広がっている傾向があり、一部のVTuberは日本よりも人気が合ったり、中国オリジナルのVTuberが出てきています。
中国市場の動向は常にキャッチアップしていかないといけないので、今後も中国動画市場を調査し続けていこうと思います!